「インド布の旅レポート」 その6

サリー織りの屋敷インドの誇り高いマハラジャのサリーは、その気品を秘めた美しさで、見る者の心をいにしえへと誘います。
ガンガーへと向かう女性たちのその姿は日本女性の着物姿と重なりました。

旅のエンディングは、デリーで出逢った、サリーを織る青年の生家に向かいました。
彼は通年のうち、半分以上デリーに来て、自分たちの織ったサリーを販売しています。
バナラシーから、車で1時間ほど離れたその場所は、広々としたのどかな平野。
大地と緑の中、農作業をするする女性達のサリー姿が風になびく風景は、時を忘れ、胸を打つ美しさです。
中庭を囲む屋敷の中から、穏やかな機織りの音が聞こえてきます。
沢山のジャガードパターンの1枚1枚が順番を待って、クルリと降りてきます。
ボビンに巻き取られた彩りが、丁寧に1本ずつ織り込まれ、美しいサリーが誕生します。
この家では、図柄を生むヨコ糸を1色ずつ織り込む作業を、2人がかりで行っていました。
少ない人手で、良いものをできるだけ多く作り出す工夫でしょう。
糸を巻き取るのも皆、男性の仕事です。
「しなやかなサリーの絹糸を作るお蚕さんは、昔は小さな繭だった」と昔のサリーを扱った方が、話してくれました。
日本の着物と同じだなぁと、インドを益々身近に感じ、サリーを纏う女性達が愛おしくなりました。
インドからのサリーが、日本まで来て、着物や帯として大切に着用されていく。
まるで、女性達の布に宿る愛情が、海を越えてやってきたようです。

ジャガード機で2人1組になりベナレスサリーを織る ザリ糸と銀糸を1本に織り込む

ガンガーに向かうサリーの女性 ガンガーに向かうサリーの女性