熱中症を心配する燃えるような夏、今夏ほど秋が待たれる8月はありませんね。どうぞ皆さまお大切に。
お着物の意匠世界では、季節をちょっと先取り、がおしゃれ。四季を楽しんできた日本の繊細な心意気のあらわれでしょうか。
虫籠、秋鳴く虫たちの文様は夏のお召し物によく使われますね。この虫の大名行列のお着物、何度見ても傑作!です。
りんりんと美しくも儚げに鳴くのは、松虫?鈴虫? 現代では鈴虫のようですが、中世では松虫と呼ばれていたようです。
京都祇園京舞井上流で大変重く扱われる『虫の音』は能『松虫』からとられたもので、男同士のふいの別れとその人を偲ぶ異色の舞。「いろいろの色音の中に別(わ)きて我が偲ぶ松虫の声りんりんりんりんとして」と謡われます。
源氏物語「賢木」で、光源氏と六条御息所の野の宮での別れの場面、御息所の歌にも背景に松虫の音が詠まれています。
「おほかたの秋の別れも悲しきに鳴く音な添えそ野辺の松虫」
松虫は「待つ」に通じるためでしょうか、りんりんと鳴くのは鈴虫でなく、松虫でなくてはならないようです。
灯屋2の店頭に美しくも優しい「虫籠と秋の草花」を描いた帯のご用意があります。
虫籠になでしこ、桔梗、萩、菊、秋の草花を彩る中に「源氏香」が描かれています。つい好奇心でその巻名を調べると、お太鼓に「玉葛」「末摘花」、前柄に「蛍」「賢木」???
光源氏によって放たれた蛍の光により、玉葛に求婚している兵部卿が玉葛の姿を垣間見る、という幻想的な名場面がありますので「玉葛」「蛍」は関連あり、虫籠ともマッチしておりますね。色好みの源氏が玉葛に想いがないわけもなく、三者の微妙な関係がこの長い物語の中でも名場面と言われるのでしょうか。
「賢木」は無理無理結びつければ、野の宮の松虫の場面と考えて・・・「末摘花」は? 巻の内容もまったく関連なく、植物としての末摘花はご存知の通り「紅花」、色も形も秋にふさわしいとは言えません。もちろん源氏香の形として良いものを置いただけで、何の意図もない、というのが正解かもしれません。なぜか虫籠、秋の花々のそばに置かれた「源氏香」に意味を添えてみたくなる真夏の妄想です。
灯屋2銀座店では、8月は皆様のご愛顧に感謝いたしまして、お買い上げ金額に対しまして10%のクーポン券をお渡ししています。ぜひ、この機会にお出かけください!!