本日は葵祭にちなんで、葵を織りだした帯と葵を描いたお着物をご紹介いたします。都の平安と豊穣の祈りが込められた「葵」を身につけて、爽やかな5月の風の中を銀座にお出かけになりませんか?
5月15日、4年ぶりに「葵祭」が開催され、華やかな斎王代行列の映像をご覧になった方も多いことでしょう。
平安時代の旧暦4月、中の酉の日に、京都上賀茂、下賀茂二社に賀茂斎院(斎王=皇女王女から選ばれた)が参向し、これに天皇、皇太子、皇妃の勅使などが付き従う行列は、服装、飾馬など華麗を極め、最高のおしゃれをしたその晴れの姿を貴賎こぞって見物したということです。この時代に「祭」といえばこの賀茂祭を指したくらいで、賀茂社の御簾、冠、車、家々も葵の葉で飾られたので、「葵祭」とも呼ばれるようです。
『源氏物語』「葵」には、この祭を見物に出かけた、光源氏の正妻葵の上と、正妻候補とも言える六条御息所の名高い「車争い」事件が描かれています。その結果敗れた御息所は生き霊となって葵の上にとり憑き、ついに死に至らしめ、御息所も源氏の愛を失って、伊勢に下る・・・源氏をめぐる女君二人が物語から退場し、新たなヒロインが登場する、物語のターニングポイントとなる事件といえましょう。
葵の葉を飾るのは、賀茂社のご神紋が「二葉葵」であるから。この祭りは武家に政治権力が移った鎌倉時代(昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の頃)に途絶え、江戸時代に復興されていますが、徳川家の紋が「三葉葵」であったことに由来があるらしいですね。
それでは本日ご紹介のお着物です。大小の霰がぎゅっと詰まった江戸小紋の裾に、葵の蔓が流れている大彦さんのお品。葵の葉っぱは、大彦さん特有の多種の刺繍で趣が添えられています。喜多川平朗さんの葵唐草文の帯を添えています。
23-04-22 大彦作 霰文に葵の付下 100,000円(税込)
18-5-1 喜多川平朗製 葵唐草文名古屋帯 88,000円(税込)
次に鱗模様の入った透かし紋織りに擦り疋田で大きな葵を表現して、金くくりで上品に仕上げている帯。糸がしっかりしているので、紗までは行かないで、単衣用として重宝しそうです。
23-05-38 葵文様の夏帯 40,000円(税込)
最後にご紹介するのは、シャリ感のある糸で透かしを入れた変わり織りの名古屋帯。
丸帯の片割れなので、暈しの色目といい、水葵の姿といい、どこか品格が漂っています。
23-05-54 水葵文様の単衣名古屋帯 60,000円(税込)