墨色の濃淡が、今月歌舞伎座の舞台を思い起こさせる着物

こちらは、墨色引き染めのぼかしがとてもシックな付下げです。そこに、赤茶色の紅葉や木の葉が散っていて、襟元など、刺繍あしらいがされています。

この着物を見たとき、今月歌舞伎座で上演中の、坂東玉三郎の「信濃路紅葉鬼揃」の幕開きのシーンが、パッと頭に浮かびました。

通常の歌舞伎十八番の「紅葉狩」は、舞台一面、紅葉の華やかなオレンジ色であふれています。それが、今回のものは、能がかりになっていて、グレーや黒が主体のシックな色使いなのです。あまりの違いに、「アッ!」と心の中で驚きの声がでました。

衣装も能からのものですが、大口袴に、鮮やかなオレンジ色が使われていて、紅葉を感じさせ、舞台が華やかになります。

帯あわせは、この舞台の色使いのように、黒地にしました。

帯地は黒繻子で、筏の川下りと水辺の景色が刺繍されています。水の音、風の音が聞こえてくるようですね。

小物には、少し色味を加えました。

 

丸ぐけは、地模様のある辛子色~山吹色で、色のニュアンスが複雑で、とても使いやすい色です。帯揚げは、明るめの抹茶色です。

さらに、この帯は、お太鼓の裏の柄がとても素敵なのです。

うまくお太鼓を裏返せば、こちらも着られるのでは?と思います。縞の着物に合わせたらおもしろいかなとか。

価格はすべて消費税込み

付下げ(お仕立て直し) 75,000円

着丈4尺5分(約154cm) 裄1尺7寸(64.6cm)

帯   65,000円

丸ぐけ 4,500円、帯揚げ4,300円

今回の舞台は、通常の歌舞伎の動きとは違うのに、玉三郎のお付きの役の若手の5人は、よく揃っていて、相当練習したんだな、と感じました。若手を育てる玉三郎も、大好きです。

また、鬼に狙われる平維茂(これもち)を七之助が演じていて、これが、目を奪うりりしさ、美しさ!!今まで見たことのない変わった烏帽子に、品のいい衣装。すばらしく似合っていて、これもとても、とても眼福。

後半は、玉三郎御一行が鬼になるのですが、若手5人は赤い毛をきちんと揃えてぐるぐる回す。この5人は、女方でないので、最初の登場の時のビジュアルは、ちょっと・・でしたが、毛振りはさすがの迫力です。

玉三郎が姫として舞う時、ちょっと扇を動かすだけでも空気をはらんでいる。夢心地になります。

歌舞伎のお能がかりは、お能とは違うので、長唄三味線と、太棹三味線が加わります。掛け合いが、また、おもしろいのです。

こんな素敵な舞台を見逃していたのは、本当に残念でしたが、今回観ることができて、本当によかった。美しいし、楽しいです。

「信濃路紅葉鬼揃」は、十二月歌舞伎座第三部(pm6時~8時)で、上演されています。前半は「吉野山」で、その後の6時55分からになります。3階席は売り切れですが、他はまだチケットがあります。おすすめです!