月別アーカイブ: 2023年6月

お客様の装い

本日も雨がちのはっきりしない天気にも対応する麻着物の着こなしをご紹介です。

こちらは薄茶色にベージュでモダンに大きな植物が描かれた昔の小千谷縮に、自然布の帯でお越しのお客様。自然布の帯は軽さはありながら、格子が染められているせいか、きちんと感もある余り見かけないタイプの帯です。灯屋2オリジナルの丸ぐけもまた時代を経た麻で、色合いや織りにニュアンスがありますね。

次にご紹介するのも小千谷縮によろけ縞の紗の八寸の帯でご来店のお客様。上質の小千谷縮は糸が細くで身体に張りつきません。また合わせた薄くて軽い帯は蒸し暑い季節の救世主。しかしこういう凝った紗の帯はなかなか目にすることも少なくなって来ました。ビンテージ物を当店で上手にお選びいただきました。

最後にご紹介するのは手書きでアザミが描かれた麻の訪問着。時代を経た物ですが、このようなタイプの着物もあったのだと、つくづくと着物の世界の素材や技法、デザインの奥深さを感じます。細い縞の対馬麻の帯を締めて、カジュアルダウン、力を抜いた着こなしです。対馬麻の帯は入手困難な人気の帯の一つです。

お客様の装いもとても素敵でした!ぜひ、皆様もお着物でお出かけください。

エネルギーいっぱい、創作帯と越後上布

本日ご紹介するのは、新進アーティスト制作の帯シリーズからの1本。こちらは帯に直接描いた海の生き物たち。大胆でユーモラス、まさにエネルギー爆発の作品です。

合わせているのは、縦横手うみの苧麻の越後上布。小格子がやさしい雰囲気ですが、こちらも経てきた時代のエネルギーを今解放させています。

詳細はHPでご覧下さい。ぜひ、店頭で、又は通販でご検討くださいね。

23-06-63 生成り地マダラトビエイ、イカ、鮭、キンポの帯 77,000円

23-06-42 グレー小格子本場越後上布 300,000円 身丈4尺5寸、裄66.5cm  (全て税込)

 

日々の着物

暑い日が続き、すでに夏物をお召しの方も多いことと思います。

7月を前に、いよいよ夏本番の季節です!!

ご紹介の着物は、涼しげな伊予染めの小紋に手書きの秋草柄の染め帯です。

帯はもともと丸帯だったものから名古屋帯へお仕立て直ししたので、染め帯ながらとても華やかな帯です。

帯が主役のコーディネートでさらりと装うのも素敵です。

伊予染めの小紋  33,000円(税込)

身丈:4尺5分(約153.9㎝)

裄 :1尺6寸3分(約61.9㎝)

袖丈:1尺2寸5分(約47.5㎝)

 

秋草柄染め名古屋帯  38,500円(税込)

 

次にご紹介の着物は、籠目文様に萩の小紋です。

青地に白い籠目紋様が大胆で華やかな印象です。

撫子の織り帯で、お稽古事に出かけるのも良いかもしれません。

お茶のお稽古は、この季節、炭の前ではかなり汗をかく頃ですので、目にも涼しいお色目で少しでも過ごしやすい装いで出かけたいものです。

萩に籠目文様絽の小紋  77,000円(税込)  (22-08-08)

身丈:4尺3寸(約163.4cm)
裄:1尺7寸(約64.6cm)
袖丈:1尺3寸(約49.4cm)
袖巾:8寸5分(約32.2cm)
前巾:5寸5分(約20.9cm)
後巾:8寸(約30.4cm)

 

絽地撫子の織り帯  25,000円(税込)

 

銀座の風景〜歌舞伎座公演から

6月歌舞伎の昼の部に出かけてきました。あらゆる意味で話題を呼んだ舞台ですが、前半は、現実とお話しが重なり心揺さぶられ、後半は生きる喜びに共感、まさにライブ感あるお芝居となりました。

生来言葉の不自由な絵師という役どころの主人公の中車さん。師匠に認められるべく精進するも、口下手もあってままならないその夫を助けるのが、猿之助さんの代役を務める妻役の壱太郎さん。二人は不遇を絶望し、死を決意。結果として主人公は師匠も認める絵を描きあげます。

中車さんは今まで抑えていた演技を一気に解放させ、重苦しかった舞台は一転して華やかな踊りの世界へ。描き上げた大津絵の襖から抜き出てきた演者たちが、次々に悪党を懲らしめていく様が実に美しく楽しい舞台となりました。

次は7月公演、歌舞伎座も平常運転となり一幕見も再開とのこと。ぜひ、銀座にお越しの際はお出かけ下さい。お着物でのお出かけだと一層楽しいですね。

 

 

お客様の装い

本日も素敵なお客様の装いをご紹介いたします。

気温が高くなったと思えば雨が続き、肌寒い日もあるなど温度調整が難しい時期。そんな季節に、比較的過ごしやすく、自宅でのお手入れも容易な麻の着物をいち早く楽しんでいらっしゃるお客様をご紹介します。

こちらは小千谷縮に、シンプルな麻の帯を合わせてお越しのお客様。小豆色に花菱紋の模様がクラシカルな大人可愛いお着物です。色も濃く、あまり透け感もないので、夏前の早い時期から9月終りまで楽しんでいただけます。

次のお客様は渋めのやはり小千谷縮に縞の麻の半幅帯。紗の万筋の羽織は蝉の羽のように薄くて軽やか。実はこちらは男羽織でしたが、このように着用されると、ぐっときちんと感が出ますね。

次のお客様は、一段と軽くて涼しい越後上布でお越しいただきました。明るい色合いで透け感も少ないので、夏前でも違和感がありません。髪飾りと帯は何と自作というおしゃれなお客様です。

お客様の装い、いかがでしたでしたでしょうか?

全てのお写真の掲載が難しい場合もございますが、ぜひ、写真を!という方はスタッフまでお声がけ下さい。

灯屋2では続々と麻の着物が入荷中です。蒸し暑い日本のこの季節、麻の着物で上手に乗り切りたいですね!ぜひ、皆様お出かけ下さい。

地味(じみ)は粋(いき)のつきあたり

いきなりの豪雨、線状降水帯、などという新しい言葉が天気予報から警告されるような穏やかならざる昨今の日本の初夏、雨が続けば心も閉じがちです。こんな時は鮮やかな色彩の着物に身をつつんで・・・というのも一興ですが、口当たりのさっぱりした、モノトーンに近い色合わせのこんなコーディネートはいかがでしょう?

5000円札でおなじみの小説家・樋口一葉(187296の妹・邦子の容姿について、作家幸田文にこんなエッセイがあります。

色白にすらりとして、高い鼻と鮮やかに赤い口をもった西洋人のような美しい人、半襟は男物の黒八を重ね、下駄は糸柾の両ぐりに白鼻緒、地味は粋のつきあたりといったすっきりとした様子』。若くして亡くなった一葉の「日記は焼き捨てよ」との遺言にそむき、姉の残した原稿や小説の草稿、 反古紙にいたるまで全て保存・整理・浄書に努めたと言われます。樋口一葉の研究が量とも突出しているのは、邦子のおかげであるのでしょう一葉存命の間は、つねに苦しい暮らしに追われる日々であり、そこから『浮世の砥石にこすられて、錐の如く鋭い』そして子を持つ女のやわらかさ』を併せ持つ、たいへんセンスの良い女人であったと伝わっています。

裄たっぷりの粋な万筋の薄羽織も入荷しています。

網目模様小紋 23−05−32  絽網目模様小紋 裄1尺6寸8寸、身丈3尺9寸 60,000円

露芝に虫達の織名古屋 23−06−26  40,000円

万筋羽織  1尺8寸8分、身丈2尺5分

 

紫陽花の季節

雨模様の銀座ですが、雨がこの季節の緑をより美しく見せるようです。

灯屋2銀座店では、スタッフのお庭からつまれたグリーンで店内を設えてお客様のご来店をお待ちしております。

そろそろ紫陽花も満開の頃ですね!

白い可憐な紫陽花や半夏生など、この季節の緑を灯屋2でお楽しみください。

 

古籠がつくる小宇宙 “定家葛”の謎

5月19日〜29日、代々木の灯屋で「古籠展」が開催されました。足をお運びいただいたお客様も多いことと感謝いたします。

“唐物写し”という少し難しげな響きのある古籠たち、その繊細で超絶な技巧に驚きましたが、いくつかの籠には、圷奈保美さんによる野の花のなげいれがなされ、重厚な空間を、穏やかなものにやさしく変えていました。

茶室や大きな空間にしか置けない籠かと思いましたが、日常の暮らしの中に、小さな宇宙を感じる籠と野の花のコラボ、とても素敵でした。

その中に「定家葛」が可憐な、どちらかといえば地味な白い花を咲かせていました。これが定家葛?ほんとうに定家葛ってあるんだ! 植物にうとく、「定家葛」は能『定家』の中に象徴的に存在するものと長く思っていました。本当に恥ずかしい‥‥『定家』が先にあって、そこから名付けられたという定家葛、数あるツタカズラの中でこの小さな十字の花を咲かす蔓性植物を「定家葛」とどうして名付けたのか? 式子と定家の恋が、それほど人口に流布していたのか?

能『定家』は百人一首の選者で名高い歌人・藤原定家11621241。公家・歌人、権中納言。『源氏物語』をはじめとする古典の注釈、書写にも携さわる。その流れをくむというのが京都の冷泉家)と後白河上皇第三皇女式子内親王(11491201。歌人としての評価も高く、歌の師は定家の父・藤原俊成。京都賀茂社「葵祭」を主祭する賀茂斎院の職にもあった)の身分違いの禁忌の恋とその果ての、定家の執心が内親王の死後もその塚(墓)に定家葛となって絡まりつき式子を苦しめるという、かなり重い内容の能です。作者は世阿弥の娘婿・金春禅竹、世阿弥後の当時の時代を映した多くの能の作者で、現代でも上演されることが多い人気曲を書いています。

歴史的には式子と定家の二人の関係を明らかにする資料はありませんが、二人の交流は確かにありましたし、定家の日記『明月記』の思わせぶりな書きぶりが後世の人々の空想を掻立て、高貴な身分の女性へのあこがれ、ともなったものかもしれません。「忍恋」を代表するような内親王の和歌、恋の歌に巧みであった定家。平安末から鎌倉時代にかけて、源平の戦いあり、やがて武家に政治が移っていく激動の時代を生きた二人です。

 玉の緒よ絶えなば絶えねながらえば忍ぶることの弱りもぞする 式子内親王

 来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ  藤原定家

杉のような大木に絡みついててっぺんまで突き抜けると青空の下、十字形の白い花をわっと咲かす、それは見事な風景、であると圷奈保美さんにうかがいました。みかけの可愛らしさ、可憐さに隠れて、実はたいへん粘り強く力強い植物なのかもしれません。やはり“定家”らしい。

定家葛はジャスミンに似た甘い香りを持っています。式子内親王は「香」にも長けていて、式子邸に伺候した定家はその香りに陶然とした、と「明月記」にもあります。でも‥‥うっかりその花びらを口にすると‥‥たいへんな毒性があるそうです。

街中でも、家の塀からひょっと伸びているのを見かけることがあるとのこと、目をしっかり開けて初夏の街を歩いてみようと思っています。

お客様の素敵な装い

本日は憧れのアンティーク薄羽織の着こなし。

向かって右のお客様の羽織にはポップな青紅葉が、そして左のお客様の羽織には萩が大胆に背中いっぱいに描かれています。

まるで一服の絵のようですが、お二人ともポーズも決まっていますね。

次のお客様が鉄線模様の薄紫色の着物の上に羽織られたのは、今では貴重な絽縮緬の縦絽の羽織。しっとりとした素材感で正に単衣の時期にぴったり。

よく見ると蜘蛛巣が描かれ、そこに本当に小さな紅葉や花弁が刺繍されています。色も黒ではなく紺色。

素敵なアンテーク薄羽織、いかがでしたでしょうか?

ご紹介しましたのは、もちろん素材は昔の上質なシルクですが、それぞれ織り方も違っていて雰囲気にも違いがあります。お着物姿を完成させる薄羽織、皆様もいかがでしょうか?

全てのお写真を掲載することが出来ない場合もございますが、ぜひ、写真を!というお客様はスタッフまでお声がけください。

 

6月8日放送NHK「すてきにハンドメイド」ご案内

当店の素敵なお客様、山田英幸さんからの情報をお客様へシェアさせていただきます。

山田さんがNHK「すてきにハンドメイド」ー私の大切を包む はじめての仕覆」に講師として出演されます。

仕覆という素晴らしい日本文化を、お茶の世界、骨董の世界だけのものにしておくのはもったいない、もっと身近にカジュアルに楽しみたいと、趣味として独学で始めた仕覆作り。20年経って「山田流」としてNHKで全国放送されるとは思ってもみなかったそう。

ぜひ、皆様、放送をチェックして下さい!

放送日時:6月8日(木)21:30〜NHK  Eテレ

再放送 6月13日(火)11:05〜NHK総合・6月15日(木)13:05〜Eテレ