日別アーカイブ: 2022年1月27日

おひとりさまをたのしむ〜山歩き、着物で映画と読書

おひとりさまをたのしむのが上手になった皆様。

いかがお過ごしでしょうか。

先日、ひとり御岳山を歩いている時に、素晴らしい桂の大樹に出会いました。

そのたたずまいと「お浜の桂」という名が心に残り、しばらくしてはっとしました。

中里介山の「大菩薩峠」に登場する哀しい女性の名です。

何度も映画化されていますが、私は1960年大映の三隈研次監督の市川雷蔵主演のものを見ました。

虚無にとりつかれた剣士・机竜之介に運命をもてあそばれながらも必死に抵抗する、中村玉緒演じるお浜が目に焼き付いています。

そして、桂に生まれ変わって枝を大きく広げる大樹となっているならば嬉しいと思いました。

原作は大正から昭和にかけて新聞に掲載された長編時代小説で、文豪達にも賞賛された傑作です。

今読んでもぐいぐい引き込まれます。

特に登場人物の着物描写は

机竜之介「黒の着流しで、定紋(じょうもん)は放(はな)れ駒(ごま)、博多(はかた)の帯を締めて、朱微塵(しゅみじん)、海老鞘(えびざや)の刀脇差(わきざし)をさし、羽織(はおり)はつけず、脚絆草鞋(きゃはんわらじ)もつけず、この険しい道を、素足に下駄穿きでサッサッと登りつめて、いま頂上の見晴らしのよいところへ来て、深い編笠(あみがさ)をかたげて、甲州路の方(かた)を見廻しました。」

お浜「島田に振袖(ふりそで)を着て、緋縮緬(ひぢりめん)の間着(あいぎ)、鶸色繻子(ひわいろじゅす)の帯、引締まった着こなしで、年は十八九の、やや才気ばしった美人が、しおらしげに坐っています。」(どちらも青空文庫「大菩薩峠 甲源一刀流の巻 中里介山」より引用させていただきました)

と、アンティーク着物好きの読者には、たまらないものとなっています。

是非、読んでみてくださいね。

こんな着物姿なら、気分も盛り上がることでしょう。

暖かい結城縮と深山に鳥の帯を、静かなひと時のお供にしてください。

カーキ色結城縮  身丈4尺5分(約153、4㎝)      裄1尺7寸5分(約66、2㎝)

深山に鳥の織り名古屋帯