月別アーカイブ: 2019年5月

自然からもたらされる恵みに感謝

季節は廻り、早いもので夏も近くなりました。
さらりとした麻や自然布が心地良い季節でもあります。
豊かな自然に恵まれた日本。
かつて衣は自ら山野に自生する植物を利用して作り上げたものでした。
その記憶があるからか、素朴な自然布に魅せられる現代人は多いです。
生まれてからずっと人工的な大量生産物に囲まれた若い人にとっては、根源的な作業は神秘的にすら思えるかもしれません。
仙台にあるYUIKOUBOU(台所草木染結工房)では、こんなワークショップも開催されるそうです。
森から始まるワークショップ2019「森から布を作る」↓
http://www.yui-koubou.jp/index.html/news682
ゼロから採集し織までの体験。
想像するだけでも、普段なにげなく触っている布に対する思いが、変わってきそうです。

現在灯屋2では、毎年恒例の夏の展示会の準備を、着々と進めております。
ですから今、日本各地の自然布の着物や帯が、日々集まってきているのです。

自然のままの素材が、たくさんの工程と時間をかけ、しなやかな糸になる。
さらに緻密な技と根気と誠実さで、美しい織物となる。
そうして、極上の衣として私たちの目の前に現れるのは、いつもながら感動的です。

この夏も、自然からもたらされる恵みに感謝の心を忘れず、皆様とともに着物や帯をいつくしんでまいりたいと思っております。

これからの告知を、どうぞお楽しみにお待ちください。

 

灯屋2 夏の企画展 「涼夏の誘い」
2019年6月8日(土)~16日(日)
11:00~20:00  (日曜11:00~19:00)

 

 

 

朝顔の付下

暦より早い体感温度に、夏を思わずにはいられない日々です。

つい着物を遠ざけてしまいがちな季節ですが、昔着物にはそんな季節も過ごしやすい錦紗の着物がありました。

ご紹介の着物は、錦紗に朝顔が描かれた一つ紋付きの付下です。

ブルートーンの色合いが涼やかな作品です。

地紋に織り込まれた流水に水車の文様も合わせて涼やかさを誘います。

水玉の帯やパールの帯留めで、露をイメージして合わせてみました。

 

 

朝顔の付下(ご売約済)

水玉の織名古屋帯 (ご売約済)

5連パール帯留め 12000円+税

 

単衣の楽しみ

前回のブログで単衣の時期に楽しめる紋錦紗のご紹介をしましたが、本日も引き続き単衣時期に楽しめる絽縮緬の染帯をご紹介いたします。

絽目がありますが絽縮緬ですので薄物ではなく単衣に合わせて頂け6月にちょうどお使い頂けます。

三本絽が10段あり同じだけ平織りされているため、涼しさの中に暖かみがあり、単衣時期にぴったりの織物です。

本手刷りの型友禅で染められた扇面柄の中には、萩、撫子、朝顔、桔梗、そして鮎でしょうか?お魚も泳いでおりこれからの季節を待ちわびるような、優しい名古屋帯です。

元は引き抜き帯でしたので、簡単にお太鼓が結べるよう柄を切り替え名古屋帯に仕立て替えました。

お着物はぼかし染めの上に銀糸で波が織り込まれ、上前と右肩にかわいいトンボが飛んでいます。

こちらも単衣で、目にも涼しく6月にピッタリです。

この季節しか楽しめない贅沢、手にして頂けるととても心が華やぐと思います。

  

波紋にトンボの単衣付下(着物19-5-09)90,000円+税
身丈:4尺(約152cm) 裄:1尺6寸8分(約63.8cm)

扇面散らし絽縮緬名古屋帯 20,000円+税

雲形桔梗(光長)帯留め 25,000円+税 素材:四分一

 

 

錦紗という名の羽衣

朝、夕の少しひんやりした風が、心地よいほど、日中の陽射しは、いよいよ夏へと向かっています。

「6月になったら麻を着ましょう!の呼びかけをしています。」と

数年前、小千谷縮みの織元さんよりお伺いしました。

この体感温度では、麻の着物に換えていくのは、大賛成!

ただし、麻も楽しみながら、この季節の醍醐味でもある単衣をご紹介させて頂きます。

着物文化の豊かな時代には、単衣時期専用の織物がありました。

紋錦紗という、まさしく羽衣のような美しい布です。

夏をはさんで6月、9月に纏う単衣。

もちろん単衣専用の布は紋錦紗だけでは、ありませんが。

お出かけの少し華やかな装いを満喫していただくには、錦紗の単衣を楽しまなきゃもったいないほどの素敵なお着物です。

他に類をみないのは、軽やかでしなやかな着心地。

錦紗は、袷にもお仕立てされますが、ご紹介致しますのは、繊細で伸びやかな糸で柄が織り込まれた透け感のある紋錦紗です。

当時、日本で用いられていた繭は、小石丸。

みずみずしい桑の葉を食し、外来種の繭より小さく、絹の都と世界中から賞賛された日本の素晴らしい絹糸で織られたたおやかな、素晴らしい布です。

当時のままの状態ではなく、当店では、洗い張り、お仕立て直しを

して多数ご用意しております。

美しい配色の葦の葉が、描かれた水辺の風景。

着物の中には、ゆったりと流れる河。

地紋の水面いっぱいに小さな撫子の花が、織り込まれています。

源氏物語では、夕顔の娘「たまかずら」を象徴する撫子の花ですね。

常夏に向かうまさしくこの時期にお召頂きたい一枚です。

この他にも様々な錦紗の単衣を取り揃えております。

ぜひ、ご来店の上、手で触って、纏って、ご自分だけの特別なお着物をお選びください。

 

 

水辺の景色撫子の流水と葦の小紋70,000円+税身丈4尺5分裄1尺6寸8分

葉陰の鳥刺繍名古屋帯75000円+税

 

 

 

古典の主人公に着せてみたい単衣の装い

国立劇場で文楽「通し狂言 妹背山婦女庭訓」を観賞してきました。
公式サイトはこちらをご覧下さい↓
https://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu/2019/bunraku_5.html

太夫、三味線、人形が一体となった迫力ある舞台。
声、音、人形の姿、名人芸にぐいぐいと引っ張られ、感動しました。
歴史的な事件を題材に、日本の美しい四季の情景のなかで繰り広げられる、激しくも悲しい物語。

大和の名所旧跡や、伝説がふんだんに織り込まれた皇族や公家の世界。
その中にあってひときわ輝く、酒屋の娘「お三輪」の恋は心打つものでした。
身分の違う世界に飛び込み、なぶられながら貫いた、激しい恋の結末。
終演後もしばらくは頭がふらふら。

純粋で真っ直ぐなお三輪に、似合いそうな着物を探してみました。
若いみずみずしさが溢れるよう、いかがでしょうか。

「妹背山女庭訓」は明和八年(1771年)、人形浄瑠璃黄金期、最後の名作者と称される近松半二ほかによる合作です。
この時代の空気と芝居への熱が、軽やかな関西弁であらわされた小説、
大島真寿美「渦」
もお勧めの1冊です。

着物と共に楽しむ日本の伝統芸能。

観劇の装いは、灯屋2にお手伝いさせて下さいね。

波に水車紋の楊柳単衣 45000円+税
裄 1尺6寸(約60,6㎝)
身丈4尺5分(約153,4㎝)

矢羽根に朝顔紋の染絽名古屋帯 35000円+税

綿薩摩で颯爽と!

今日の銀座は陽射しも強く、夏の気配を感じます。

一昨日は嵐、昨日は爽やかな、今日は夏日とめまぐるしい天気に翻弄されてしまいますね。

現代の着物は袷と単衣ですが、昔は”綿入”がありました。

今ほど暖房設備の整っていない時代、寒い冬は袷の着物に綿を入れた”綿入”で過ごし、その綿を抜いたものを”綿抜”と言いました。

綿入れから袷への更衣で初めて着る初袷はすがすがしく、肌着を着ないで直接肌に触れる清涼感を楽しんだようです。

袷に夏を感じた時代に想いを馳せると面白いですね。

時代や環境によって着物の着方や楽しみ方は様々、まだ5月ですがもう夏日です。

単衣を軽やかに纏って、颯爽とお出かけしたいですね。

今時期にぴったりな綿薩摩は合わせる帯で様々な表情を見せてくれます。

本日ははんなりとした清涼感あふれる絽縮緬の染帯を合わせました。

こちらはもともと単衣用の着物だったものを開き名古屋帯に仕立直しました。

お花はアネモネでしょうか、花弁に施された刺繍も美しく、今にも爽やかな風が吹きぬけそうです。

     

綿薩摩単衣着物 120,000円+税 身丈4尺(約152cm)裄1尺7寸5分(約66.5cm)

絽縮緬花柄染帯 40,000円+税

帯をえらぶ楽しさ

みずみずしく香る爽やかな5月の風、鳥達は歌い、花は微笑む。

この季節は、お着物でのお出かけもウキウキと心が踊るようですね!

紬や綿の単衣にお気に入りの帯ですっきりした着こなしは、心地よく季節を体感しているようです。

ご自分だけの帯を探すのは、この上ない蜜な時間。

灯屋2銀座店には、常時700本の帯を取り揃えております。

紬にしっくりとくる諸外国布の帯から日本古来の季節を愛でる染帯。

また、卓越した技術の職人技に目を見張る刺繍帯と上質な織りの帯。

デザイン、素材の質にこだわった作家物、さらには、現代では、同じように作る事は、とてつもない時間と技術を要する江戸期の帯など。

ぴったりくる帯を探している、帯を待っているお着物があれば、ご遠慮なくお持ちください。

ご自分の装いを楽しめる帯と出会いに灯屋2銀座店にぜひ、いらしてください。

女優の一色采子さんが、出版された書籍「母のタンス、娘のセンス」をご紹介させて頂きます。

お着物で過ごされたお母様から譲り受けた物をご自分流の着こなし術で上手にお召しになっている。

それぞれ組み合わせのポイントもわかりやすく書かれている写真集です。

スラリしなやかなシルエットにショートカット。

明るい笑顔が、とてもチャーミングな一色采子さん。

先日、お食事会にご参加頂いた際にますますの魅力は、飾らない愛らしいお人柄と感じました。

ご自身の着こなしに取り入れて頂いた灯屋2のウズベキスタンやアフリカ、インドの帯。

海図柄の付け下げもご本の中でご紹介頂きました。

ありがとうございます!

「母のタンス、娘のセンス」灯屋2でもお取り扱いしてます。

ここだけの話ですが‥3冊だけサイン入りです!

皆様のご来店お待ち申し上げます。

 

鯉の季節

5月は鯉。

夏の着物や帯の文様として、緩やかな川をゆったりと泳ぐ姿は、なんとも心地よく感じさせてくれます。また、鯉は「鯉の滝登り」とも言われるように、出世魚でもあります。

子供の日、5日の鯉のぼりの時期は過ぎてしまいましたが、これから夏に向けて鯉の季節です。

絽目が入った生成色の地に、鯉の姿が墨絵のように描かれた帯。

写真の胴前の柄、蓮は、時計回りに帯を締めた時に見えてきます。

左肩に手を預けて反時計回りに帯を締めると、胴前の柄は鯉になります。合わせる帯留などの小物によって、二通りの柄が楽しめます。

今回は、水辺に浮かぶ蓮の花に合わせて、舟の形をした翡翠の帯留を選びました。よく見ると、舟の上に、二羽の鷺の姿が掘り出されています。仲睦まじく座っているかような可愛らしい姿。

着物は、松皮菱文様の生成の紗紬の夏着物。蒸し暑くなりそうな6月単衣の頃から、ぜひお召しになってみてください。

生成地松皮菱文様の紗紬:30,000円+税

身丈:4尺2寸(約159cm)

裄丈:1尺7寸(約64.5cm)

鯉の絽名古屋帯:30,000円+税

舟に鷺の帯留(翡翠):38,000円+税

菖蒲と金魚

少し湿気のある風が吹いている5月中旬の銀座、新緑から梅雨への季節の移り変わりを感じます。

この季節の水辺を彩る菖蒲柄の小紋。優しい藤鼠色の地に、美しい菖蒲の花が咲き誇っています。

合わせた帯は、灯屋2オリジナルの刺繍帯。墨色の変わり縦絽の地に、尾びれをひらひらとさせながら泳ぐ愛らしい金魚の姿が刺繍されています。

水面の中に、涼やかな一粒の緑メノウを置いた彫金の帯留を合わせました。

しっとりとした風を感じながら、お着物でのお出かけをお楽しみください。

菖蒲文様小紋 (ご売約済)
身丈:4尺2寸5分(約161.5cm)
裄:1尺7寸5分(約66.5cm)

金魚の刺繍名古屋帯(帯19-5-02):120,000円+税

水面の帯留(銀・メノウ):15,000円+税

オリジナル半襦袢の半襟の付けかた

新年号の始まりと同時に開催された単衣展も、無事終了しました。
当店は催事以外でも、常時新入荷商品がございます。
微妙な季節の変化に合わせた品揃いを心がけておりますので、お立寄りくださいませ。

オールシーズン対応のオリジナル半襦袢も、沢山入荷しました。
S、M、Lの3サイズ。
肩幅と身丈と衿幅に違いがあります。
マジックテープで付ける二部式の襦袢袖と巻きスカート状の裾よけと合わせてお楽しみ下さい。

半襦袢のご使用方法、半衿の付け方の図解説明書きも付いておりますが、お客様より半衿の付け方の質問を受けますので、更なるコツをご紹介致します。

柄や刺繍のある半衿は、お顔の近くに良い柄が出るよう、まずは仮置きし確認してから作業に入ると失敗しにくいです。
柄の位置が確認できたら、次は待針で留めます。
下図の①にあるように半衿布の両端を引っ張り気味に付けるのがポイントですが、特に背中心から半衿の真ん中辺りまでを引っ張るのがシワを寄せないコツになります。

衿は衿芯が入った広衿になっており、二つ折りにして使います。
そのため図②のように横方向にはゆとりを持たせると折ったときにきれいに衿が落ち着きます。


大きな針目で構いません。


内側の衣紋を抜いて見えるところだけ、針目を小さくして下さい。


内側は、カーブになる分、布が浮いてくるので、更に引っ張り気味に付けると美しいです。

慣れると楽しい針仕事ですよ。
季節のお勧め半衿は、よりどりみどり。
どうぞ美しいお衿元で、お着物を華やかに彩って下さい。

オリジナル半襦袢 S,M,L各サイズ 8,500円

刺繍、ビーズ、アンティーク半衿 各種揃えてございます。