京都徒然 その3

西陣地区にある「渡文」初代渡邉文七氏の店舗兼居宅を改築し、全国の手織物や能装束、西陣織を展示している「織成館」を見学しました。

展示の中でとても印象に残ったのが、植物の櫨(ハゼ)を使った独特の染色方法で染められた糸。
太陽の光があたると色が鮮やかに変化します。中でも【黄櫨染】(こうろぜん・一番下の糸)は太陽光により金茶から赤茶へ変化するため太陽の色を象徴したものとして、平安時代初期より天皇が儀式で着用する袍(ほう)の色として定められていました。
もっとも厳格な禁色だったそうです。
昭和3年、昭和天皇の即位の礼でもこの【黄櫨染】の御袍を着用されています。

天皇側近の少数の人々以外の目に触れる機会がなく、正確な染色方法も一般には知られていないことから、約1200年にわたり幻の染と呼ばれていました。また、難易度の高い染色で、安定して色をだすことは不可能とも言われています。
現在では日本の美意識の集大成ともいえるこの【黄櫨染】を染色作家たちが研究し再現をしています。

写真糸は【黄櫨染】と同じ技法を使いいくつかの色を再現したものです。
現代の私達が見てもその色の変化に「おーっ!」と声をあげずにはいられません。
太陽の光で色が変わる魔法のような布を見て、古代の人々は唯一無二の象徴として尊んだのでしょうか。

【黄櫨染】矢印【黄櫨染】

田中

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