大きなの赤い矢羽根模様に、色とりどりの秋草が咲き乱れるアンティークの単衣。
薄手の絹に、一面銀糸が絽目のように織り込まれ、よく見るとそれは紗綾型の地紋のように形取られており、とても凝ったつくりになっています。
日本の景気が上がり、作る端からきものが売れていったこの時代は、呉服屋も職人もそしてもちろん着る本人も、従来のものでは飽き足らず、同じ技法であっても何かしらの新しい趣向を凝らしてきものが作られたそうです。
大ぶりの矢羽根模様に草花を散らした図案自体は、この時代のモチーフとしてはよく見られます。時代劇の女中姿でもおなじみのように、矢羽根模様は江戸時代からの定番で、魔を除ける、または一度放つと戻ってこないことから結婚の時にこの文様のきものを持たせるなど、数多く用いられてきましたが、相手の心を射抜くということにも通じることから恋愛成就に担がれることもあったようです。
この時代の女の子たちも、そんな自分の想いを秘めてきものを作ることもあったのかもしれません。
異国の目新しいものを輝くまなざしで見つめた大正、昭和初期の華やかな少女たちをイメージして、アールデコ風の刺繍帯を合わせてみました。
矢羽根に秋草単衣小紋 64,000円
身丈:4尺5分(約153.9㎝) 裄:1尺7寸5分(約66.5㎝)
アールデコ草花刺繍名古屋帯 126,000円
松田