『源氏物語』の装束1 「よみがえった女房装束の美」展

本年もよろしくお願いいたします。皆さまには良い年をお迎えのことと存じます。

2024年のスタートに重大事件が続き、心騒がしい新年です。被災されました皆様には心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復興をお祈り申し上げます。

昨年末丸紅ギャラリーで開催された『「源氏物語」よみがえった女房装束の美』を駆け込みで鑑賞しました。NHK大河ドラマが『源氏物語』に関わるためか、「日曜美術館」でも取り上げられたためか、会場は多くの女性で賑わっていました(男性も少々、着物着用なら入館料無料)

主要展示は、「若菜」下巻の六条院での女楽(おんながく)の場面。招かれた明石の君の装束を再現したもの、となっています。「柳の織物の細長(ほそなが)に、萌黄であろうか、小袿(こうちぎ)を着て、羅の裳の目立たないものをつけて・・・」

光源氏の邸宅六条院で正月に行われた「女楽」、源氏の正妻・女三宮の琴(きん)、正妻格の紫の上の和琴(わごん)に伍して琵琶を担当した明石の君=源氏の娘を生み、その娘は中宮となり、やがて天皇となる皇子を生んだ)の高雅な装いはその矜持とともに微妙な立場、“身の程”のあらわれた装束なのかもしれません。『源氏物語』の中で装束衣装は大きな役割を持ち、誰がどのような色彩、取合わせを身につけたか、は登場人物のセンスや個性をあらわすだけでなく、政治的な地位、身分、立場、関係性をあらわしています。

柳の細長、萌黄の小袿、表着、重袿、単(ひとえ)、袴、裳−−展示された復元装束は、時代考証を重ね、当時に近い天然染料で染色された極細の絹糸で作られたようです。(染色は吉岡更紗の手による)

この時代、紐で結んで身にまとう、ということはなく、下着、上着の区別も現代とは違っていると思われます。あえていうなら、単と袴は下着といってもいいかもしれません。極細の絹糸でおられた衣装は「するすると脱衣が可能」であったようです。

空蝉(うつせみ)が小袿をさっと脱ぎ捨て若き光源氏の手を逃れ、形見の衣装だけを源氏の手に残すことができたのも、そのためであったのでしょうね。