古来より、緑は藍に苅安、又はキハダを重ねて出すということが染色技術として確立されていました。その作業の繰り返しの反面、白い糸を藍がめに浸すと、茶から縹色に変わる前の一瞬緑が生まれる、その緑を留め置けない不思議さ。
志村さんの経験と疑問と思考は、自然界における色の意味や、人と色の関係という見えない世界に入って行きました。
「織部」には、「織部段」というもう1枚があり1987年作となってますが、この付け下げはその後の創作とみられます。
織部焼きに見る深い色感とみなぎる力量をここで彷彿とさせ、そこに熨斗目文様という格調
高いテーマ性を加えています。
芝翫茶と常盤緑が交わし合う明晰で知的な色のハーモニー、かわいい絣足と小格子、白場の繊細で清潔感の感じられる繋ぎ糸。
志村さんの覚悟を見る思いがします。